第17回 選句結果 令和7年1月(赤字は特選)
寂寥の中を舞い落ちる桜 権代 祥一
風景が目に浮かびます(徳富)
悩むつまさき春のY字路 佐川智英実
「悩む頭」でもなく「悩む心」でもなく〈悩むつまさき〉とした所に独自性がある。(西生)
どっちに行くかつまさきが考えているというところが面白いと思いました。(権代)
新生活をどこに向かおうと悩んでいます、新しい人生のスタートは確かに大事ですが、とにかく行かなければ何も見つかりません。自分の人生、自分で悩み、行くと決めたら、真剣に、自信もち進んでください。みんなが通る道だと思います。(田中)
駅前の通路ヨチヨチ土鳩と共に 徳富 ふみ
この様子を、少し離れたところからずっと眺めていたいなぁ···と思いました。(葉子)
防府駅には沢山の鳩がいますね。電車を利用する時は心に余裕がなくて、遊びが足りないと気付くのでした。(佐川)
造花の庭に逆光のおかあさん 西生ゆかり
まるで夢の中のワンシーンを見ているようです。眩しさの中、手が届きそうで届かない感じを想像しました。(葉子)
わざわざ買ってきた造花を庭に植える狂気。何気に花選びにもセンスが光る、それは私を産んだ人。逃れられない苦しさで過呼吸になりそうです。(佐川)
タイムカプセルに誰かさんのひとりごと 葉子
タイムカプセルは埋めるまでがキラキラと楽しいですが、何十年後の答え合わせは残酷なこともありますね。(佐川)
砕いて食べたいシリアルナンバー 葉子
シリアルナンバーも暗証番号もかみ砕いて飲み込んでしまいたい。ついでにポイントカードと、スマホいっぱいのアプリも(佐川)
昨日のダウンをしまえば春 佐川智英実
季節の切り替わりをうまく表現されていると思いました。春を待ちわびている様子が表現されていていいなぁと思いました。(権代)
春の始まりはダウンとの別れから、ですね。「昨日の」というのがまた素敵だなと思いました。(葉子)
奥歯を削る銀の音楽 西生ゆかり
ネガティブなあのルーターの音を銀色の音楽としたところが面白いと思いました。(権代)
歯医者さんの、あの音は、あまり好きな人はいないと思います。それを音楽に銀を詰めるのか、被せるのか?歯医者さんが爽やかに感じます。(田中)
銀の音楽、歯医者さんに行くたびに思い出してしまいそうなインパクトのある言葉ですね。(葉子)
苦手な歯医者さんですが、これからは少し前向きになれそうです。たまに聴く悲鳴はハーモにーなのだと脳内変換します(佐川)
植えたのが多分去年かチューリップ咲く 徳富 ふみ
あれこれと種を撒いていますが、忘れたころに芽が出てくることがあります。人が右往左往しても花が咲く時期は決まっているのだといつも思います。(佐川)
握手で知ったわたしのかたち 佐川智英実
一人でいる時には〈わたしのかたち〉はわからない。人と触れ合うことにより〈わたしのかたち〉が判明する。自我のあり方というものを考えさせる句。(西生)
相手と握手してそのリアクションから自分のカタチが解るという凄い句!! 感動して圧倒されました。(権代)
相手と手を握り合うとき、感じるものはいくつもあります、暖かい手の人だとか、シワシワの硬い手だ、など。それらの手から自分というものを、再発見したのですね。握手って不思議です。(田中)
相手を感じると同時に自分の何かに気がつくこと、あるような気がします。心地よい句だなと思いました(葉子)
春嵐春雷 爛漫の通過点 権代 祥一
「しゅんら んしゅんらい らんまんのつうかてん」と読んだ。字面も華やかだしリズムもよくて、何度も口ずさみたくなる句。(西生)
「爛漫」と言ってもらえて、悪天候も何だか陽気に通り過ぎていってくれそうです。(葉子)
太陽の日差し少なく春の虹なく 田中 直心
否定形を使って残像を残す手法ですね。いいなぁと思いました。(権代)
傘はひとつの二人が並ぶ中華そば 佐川智英実
天候不順になってしまったのに並びたいラーメンなんでしょうね。美味しそうです(権代)
ラーメン屋さんでしょうか、傘は一本で並ぶのは二人、濡れて寒そうな感じの景が浮かびます。二人の仲はポカポカでしょうね。(田中)
花吹く女神(めがみ) 口からは春の虹 田中 直心
花吹く女神の正体が不明だけど、口から虹が出ているというシチュエーション。女神は春のこと? 「吹く」と「口」が近いのでもっと別の表現だったらどうだったでしょう? でも、綺麗な句だと思います。(権代)
ワクワクする句ですね。絵画のビーナスの誕生が頭に浮かびあがりました。天にしようか悩みました(佐川)
空っぽにできない家の雑念 権代 祥一
家に住む人ではなく家そのものに知能があり、そこに雑念が湧いているかのような把握が面白い。(西条)
なんとなく分かる感じです(徳富)
(葉子)
よーく分かります。だからみんな旅行して一時でも雑念から逃れたいのでしょうね。(佐川)
校歌のように流れる川 佐川智英実
川は昔からある自然物、校歌は最近できた人工物なので、「川のように流れる校歌」と言うのが順当だろう。それを逆にした点が面白い。(西生)
卒業・入学シーズンの春の小川、さらさら流れる川、すらすら出てくる歌詞、「校歌のような」という表現がこれらの方向性を与えていておもしろいと思いました。「天」の次に取りたい句。(権代)
終わりなくとうとうと流れる様子が浮かびます。(葉子)
いくつもありて若者迷う別れ道 田中 直心
私も若い頃はよく迷う人でした…もう振り返っても人生を変えられませんがもう一度若い頃に戻れたら違う今があっただろうと思うのですが…(徳富)
大きな選択に迫られる時、選べることも幸せなのですが当事者は辛いものです(佐川)
首を使はぬ論理の踊り 西生ゆかり
最近はよく腕・首など体全体での踊りを、テレビ等でみます。
句に気付かされました、頭の中で考えたり判断したりするのも
立派な踊りのようですね。(田中)
ロボットのダンス? 意味がいかようにも取れそうで、その意味達が同じ方向を向いていたら「天」にしたかも・・・。(権代)
