斜め後ろ振り向く力の無い母だ 田中 直心
真後ろではなく〈斜め後ろ〉にすら振り向けない母の無力さを、淡々と客観的に描写した点に惹かれました。
(西生)
私も頚椎悪いから振り向けないので身に詰まされて(徳富)
老いることの切なさが、じわじわと伝わってきます。(佐川)
連れては行けない苗に水をたっぷりと 佐川智英実
まだ小さい苗でしょうか、かわいくて置いて行くのが心配な気持ちが伝わってきます。(葉子)
一ヶ月の出張で盆栽が全滅したことがありました。以来、鉢植えはしないことにしています。(権代)
焦げたフライパンが得意げに屋台 葉子
長く商売されている屋台を誇るように、その中心にいてフライパンは頑張りました、焦げ跡はその証でしょうか。
誇れる何かをこの年にしてまだ探している自分です。(田中)
雨に濡れ餌を貰いに野良猫達が来る 徳富 ふみ
雨もせつないけど、この酷暑に野良猫たちはどうしているのでしょうか(佐川)
雲の葬列 普通に叶ふ夢 西生ゆかり
何か意味不明であるが故に、詩的で多層的な意味を示唆できる素晴らしさを感じました。(権代)
額の汗母乗せた車椅子孫達と 田中 直心
額の汗 ②その汗をかいている母の顔 ③その母を乗せた車椅子 ④その車椅子と共に歩いている孫達 というふうに徐々にズームアウトしていくような語順が特徴的だと感じました。(西生)
(葉子)
倫理の草に餓ゑてゐる 西生ゆかり
人として守るべき道、倫理に餓ゑてゐ無いかと、作者は問うています。私も「近頃の若い奴は」とよく言われたものです。今の若者を見聞きしていると心配にもなります。飢えた親が飢えた子を育て、マスコミネタにもなります。自分の子や孫を飢えさせたくないものです。時代のギャップを表現されるために、字体を変えられているのかと思いました。(田中)
倫理や道徳が失われていく時代・・・。そんな中で餓えている・・・と歴史的仮名遣いは復古を切望していらっしゃるのでしょうか? ちなみに私は倫理法人会で勉強しています。(権代)
いさかいのままプラスチックな朝 佐川智英実
〈プラスチックな〉という形容に惹かれました。シティポップの歌詞に描かれるような都会的な生活と見ることもできるし、プラスチックの食器に囲まれた冷ややかな生活と見ることもできます。(西生)
無機質なイメージを「プラスチック」で表されていて、なるほどと思いました。身近な言葉が印象的です。(葉子)
プラスチック・・・無機的で平凡な感じがいいですね。(権代)
路傍の軍手 別れた片手 権代 祥一
道に落ちている手袋に毎度驚いてきました。落とした人も残念でしょうが、落とされた側も無念だったのですね。(佐川)
弔い花と過ごす春だった 田中 直心
〈過ごす〉という現在形と〈だった〉という過去形が混在しているのは、この〈春〉が現在でもあれば過去でもあるからでしょう。終わらない弔いの中を生き続ける主体の姿が思い浮かびます。(西生)
天を悩みました。身近な人がいなくなる喪失感が美しく表現されています(佐川)
(葉子)
ドアノブが生えてきた 西生ゆかり
頭を打ったのでしょうか···そうだとしたらとても痛い一撃ですね。申し訳なくも面白く感じてしまいます。(葉子)
そうだ、ドアノブは確かに生えています。何十万回と見てきたのに不覚でした。(佐川)
はっとして手繰り寄せる光陰の先 葉子
はっとして手繰り寄せたのは、時間でしょうか?光陰矢の如しとも云います。年・月・日・時間はとても大切です、私などは、かなり無駄が多いと思います。気をつけなければなりません、努力いたします。(田中)
ちょっとよく分からないのですが何となく惹かれて(徳富)
ひとりの部屋の薄暗さ気がついた 田中 直心
ひとりと薄暗さがマッチしてるな?と思って… (徳富)
気づく人は自分しかいないということなんですよね。よくわかります。(権代)
よく経験します(佐川)
買ったはず茗荷の物忘れ 佐川智英実
高価なお茶を買われたのでしょうか?忘れたら大変です。しかし物忘れはどうしようもありませんね。
私も忘れ物が多いので困ります。予定の日付や時間は、必ずスマホにメモるようにしています。(田中)
こちらで「買い忘れた!」と言う一方、買われるはずだった茗荷は売り場でぽかんとしているかもしれませんね。そんなかわいらしさを感じました。(葉子)
おもしろい!(権代)
飛べ熱気球見えない縄ほどく 佐川智英実
これから解き放たれる光景を見ているようです。素敵だなと思いました。(葉子)
だんご虫も蟻もみんなで生きている 徳富 ふみ
だんご虫や蟻も、その他の生き物(人間も)もみんな協力して生きていけたら最高です。が、生きるための戦いも存在するのも事実です。一番の愚か者は人間かもしれません。(田中)
ついに来たぽっぽっと窓鳴らす 田中 直心
〈ついに来た〉ものは何か、主体はなぜそれを待ち構えていたのか。生物なのか無生物なのか、善きものなのか悪しきものなのか。想像力が搔き立てられます。(西生)
天秤に金平糖 星のおもみ 葉子
なんて美しいんだろう。ころころと転がる金平糖のかわいらしさと、子供の頃を思い出します(佐川)
金平糖が星型になるのはまだ謎だと聞いたことがあります。謎の重み・・・・(権代)
明日は雨らしい 晴れる日にまた行こう 権代 祥一
自然界には逆らえませんね。雨の日はいっぱい休んで、また明日飛び回りましょう。(佐川)
夢の間にエクレアを挟むんだよ 西生ゆかり
けっしてシュークリームではなく、ましてやマカロンでもない。やはりエクレア、いやエクレアでしかありえない。(佐川)。
エクレアの間かと思ったら夢の間・・・エクレアはセブンイレブンに入ったら必ず買います。笑(権代)
瓶のふた開けてもらってまだ女 佐川智英実
はっきりと言葉にするには少し恥ずかしいような嬉しさがありますね。(葉子)
か弱さで女ってことですかね? 最近瓶のふたが開けられなくなってきたので私は「もうジジイ」かも。(権代)