第16回 選句結果 令和7年1月(赤字は特選)
ため息一つ 上を見る 権代 祥一
切ない気持ちが伝わってきます(徳富)
ため息のあと、しばらくは下しか見れないものですが、作者の前向きな人柄を感じます(佐川)
下を向かないで上を見上げる動作に、物寂しさと前向きな諦めもあるように感じました。(葉子)
芸妓の通る傘さす月の石畳 田中 直心
ゆっくりと優雅に歩く姿、非日常へと連れていかれました。大河ドラマのべらぼうも大好きです。(佐川)
痛いみたい僕たちの外側 西生ゆかり
外側は痛いけど、出るのが成長だと思います。(権代)
外猫が寒波の中でもやって来る 徳富 ふみ
猫の生きる力を感じさせます。(権代)
寒い中を狼のような目の猫が迫ってきます。そんな迫力を感じました。お腹を空かせ闇の中をくる狼猫です、闘いが始まるのでしょうか?(田中)
震えながら小さな身体でやってくる猫たちを応援せずにはいられないです。(佐川)
「そろそろかな」と思う時間に現れるとほっとしますね。寒い中ご苦労さま、と言ってしまいそうです。(葉子)
雪野原の記憶に犬放つ 葉子
「記憶に」というのが願望なのか・・・。(権代)
記憶にがいいですね。白い雪、白い息、白い犬とすべてが真っ白な世界を想像しました。(佐川)
ノンカフェインの夜は更ける 佐川智英実
カフェインを摂っていないにも拘らず眠れない夜。それを淡々と受け入れている主体の姿が思い浮かぶ。(西生))
穏やかで長い夜の時間、眠くなったら寝ていいのですね(葉子)
屋根雪も山雪も積もる三角月明かり 田中 直心
静かな抽象画を見ているような気持ちです。(葉子)
詰めろ詰めろ風呂弁当だ 葉子
〈風呂弁当〉という謎の言葉についてじっくり考える余裕もなく、〈詰めろ詰めろ〉の勢いに押し切られてしまう。理屈ではなく感覚で句の世界に巻き込まれる感じが、何とも心地よい。(西生)
丸めたまんま電気屋さんのカレンダー 佐川智英実
会社員時代から、毎年見てきた景がこの句にありました、このカレンダーを見つけ句にした、その眼力、句に対する気持ちがこういうとき出てくるのでしょうね。(田中)
摺(てす)りのヒヤリ階段降りて薄氷(うすごうり) 田中 直心
冬の朝の体感を生々しく伝える句。〈手摺り〉〈ヒヤリ〉〈薄氷〉で韻を踏んでいるのも心地よい。ただ、〈薄氷〉の振り仮名は「うすごおり」(旧仮名なら「うすごほり」)が正しいのでは。(西生)
我が家の北側が想起させてくれます。(権代)
対面に父母はいない同じ席でごちそうさま 権代 祥一
(徳富)(葉子)
元旦に仏壇の夫と屠蘇を飲む 徳富 ふみ
屠蘇の屠は屠る(ほふる)と読み、敵を打ち負かす、という意味もあります。今は亡き旦那さまと、汲むお屠蘇、今年をいくぞの決起の儀のようです。今年は無敵です。(田中)
ポストに落とす一光年の届かない恋 佐川智英実
意識のすれ違いでしょうか? 遠さを1光年で表す感じがいいです。(権代)
とても綺麗なものが投函されたように感じました。(葉子)
感謝して涙の後始末 権代 祥一
繰り返し読みたい句だと思いました。(葉子)
削いでも削いでも歌ふ鳥×2 西生ゆかり
歌ふ鳥は実は饒舌な井戸端会議中の比喩だったりして・・・。(権代)
斬新でいいですね。鳥だったら2は少なすぎる。想像をかき立てます(佐川)
大雪(たいせつ)と聞く白に憧れ少しだけ 田中 直心
見たことのないほど積もった雪への憧れ、わかります。「少しだけ」の使い方が可愛らしいです。
(葉子)
わかるな~、もちろん大変さもわかっているのだけれど。この小さなわくわくは隠せない。(佐川)
遺伝子が受話器片手に落書きしてる 葉子
中七・下五はよくある景だが、上五に〈遺伝子〉を置いたことで一気に異様な世界が立ち上がった。(西生)
無意識が遺伝子なんでしょうか? おもしろいと思いました。(権代)
作者自身のお子様を遺伝子と詠んだ、流石と思いました。作者が電話中に何かメモしている、その姿を、遺伝子くんはいつか見た事があるのではないですか?(田中)
電話相手が母で、お互いに落書きをしている様子を想像して楽しいです。。逃れられない遺伝情報ですが、かわいいからほっとします。(佐川)
長く生きれば又ふりだしの人生(じんせい)双六(すごろく) 佐川智英実
ふりだし・・・還暦の時にそんな感じがありました。(権代)
(徳富)
ノックして言葉が入る 西生ゆかり
それだけ・・・と言えばそれだけなんだけれど、いろんな意味を重ね合わせて心情と情景が描写されているのが深い感じでいいです。(権代)
コープの配達がこんな感じです。おもしろい!(佐川)
脳裏に生えた雑草を刈る坐禅 権代 祥一
頭の中に芽生えてしまった雑念を坐禅で祓おうとしています、座禅で脳裏の忘れたい思いを祓ってください。(田中)
雑草を刈る」という表現が清々しいです。刈り続けた後の感覚を知ってみたくなります。(葉子)
生い茂る雑念雑草、根こそぎ借りたい(佐川)